「君は終わってる」と言った上司へ。伝え方一つで職場は変わる

ビジネス系

「君は本当に終わっているね。ありえないよ。」

先日、ある同僚がこう言われて、肩を落としていた。理由は、彼が担当していた清掃の仕事が滞っていたこと。しかし彼には、同時に運搬の仕事も任されており、現場では常に時間とリソースの綱引きだったという。

とはいえ、彼は仕事ができないわけではない。少し大雑把ではあるが、情に厚く、人一倍人間関係を大切にするタイプだ。それでも、その日を境に彼の表情からは生気が消え、どこか職場にいるのが苦しそうに見えた。

モチベーションを根こそぎ奪う一言は、時に爆弾よりも破壊力を持つ。

上司の立場からすれば、滞っている仕事を指摘し、改善を促したかっただけかもしれない。しかし、その「伝え方」こそが、最も大切だったのだ。


傷つける言葉は、管理の代替ではない

今回の件には、大きく3つのマネジメントの問題が隠れている。

  1. 現状を把握していないまま、頭ごなしに叱責したこと
  2. 仕事に関係のない人格否定を含む発言をしたこと
  3. 数値的な管理や報告体制が整っていないこと

上司は「結果」だけを見て怒った。しかし、彼が複数業務を抱えていた事実を知らなかった、あるいは知っていても配慮しなかった。

そして「終わっている」「ありえない」という言葉は、もはや評価ではなく侮辱だ。仕事の話をしているはずが、いつのまにか「人間そのものの否定」にすり替わっている。これでは職場は戦場になるだけだ。


マネジメントの本質は、「動かす」こと

指導の目的は怒ることではない。相手を「改善へと動かすこと」である。

では、どうすればよかったのか。答えはシンプルだ。

  • 状況をまず聞くこと
  • 数値や行動で具体的に指摘すること
  • 人格や感情ではなく、業務内容に集中すること
  • 改善案を一緒に考えること

例えば、「この清掃作業、予定より2日遅れてるけど、運搬と重なってた?」と聞くだけで、相手の防衛心は下がる。そこから、「次回からは、運搬の量を確認してからスケジューリングしよう」と建設的な話ができる。

上司の伝え方は、部下のパフォーマンスとチーム全体の士気に、決定的な影響を与える。


「信頼していないけど、任せている」は崩壊のサイン

実はこの話を聞いたとき、私自身も考えさせられた。

「これは反面教師だ」と思った。

なぜなら私も、「任せているけど信頼していない」状態を経験したことがある。報告義務を徹底すればすぐ解決する話なのに、それを怠り、モヤモヤしたまま「まぁ、大丈夫だろう」と曖昧な期待を抱いた結果、トラブルになる。

上司が仕事に“モチベーション”を持ち込むのは、時に危険だ。感情的な怒りが「熱意」と錯覚され、相手を傷つける言葉を正当化してしまうからだ。だからこそ、マネジメントには冷静な仕組みが必要だ。


「伝え方」が変われば、職場も変わる

人は言葉で動く。
その言葉が人を前向きにさせるのか、それとも心を閉ざさせるのか――すべては「伝え方」にかかっている。

「君は終わってる」と言われて、誰が自ら進んで仕事をしたくなるだろう?
逆に、「君が抱えている仕事の量、ちょっと整理しよう」と言われれば、協力する気になるはずだ。

言葉は道具だ。雑に振るえば武器になるが、丁寧に使えば信頼を築く橋になる。

マネジメントとは、人を動かす仕事だ。
だからこそ、「伝える」前に、「どう伝えるか」を問わなければならない。


おわりに:伝え方は才能ではなく、技術

「伝え方」なんてセンスだと思ってる人もいるけれど、それは完全に幻想だ。
聞く力、論点を整理する力、数値で話す力、感情を沈める力――これらはすべてスキルであり、訓練で身につく。

伝え方を磨くことは、部下を守ることであり、結果的に自分を助けることにもなる。
そういう意味で、「伝え方」はマネージャーの武器であり、責任でもある。

だからこそ、怒りたいときほど、深呼吸してから言葉を選ぼう。
その一言で、相手の明日が変わるのだから。

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